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らんらんしてるときに更新

【映画】竜とそばかすの姫を見てきた

やほほい。
寝落ちしたからもう寝ます。
14族です。


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竜とそばかすの姫を見てきました。

最近になって1日に映画2本キメる技を会得しましたが、割と物理と精神で体力消耗するので次の日休みの日じゃないとやる気が起きませんね。
大前提としてめちゃんこ映画観る人間じゃないんですけども。

さて、サマウォやおおかみこどもが金ローで放映されて、CMで細田守最新作!とデカデカ宣伝されておりました今作。
実を言うと細田監督作品を映画で見るのは初めてだったり。
前述のようにめちゃんこ映画観る人間じゃない、というか割と映画見ない人間かもしれないので深い理由は無いです。
が、スーパーヒーロー戦記も見ることだし、友人でハマってる人もいるしいっちょキメますか!と挑んだ次第。


ーーー


前置きはここまでにしておいて、まず鑑賞後の感想。
なんてものを見せてくれたんだ……という恐れと困惑と歓喜と清々しさが入り交じったような、心のダムが決壊した感じでした。
ぶっちゃけると、自分は割と天邪鬼な性格です。
映画を贔屓目に評価している友人がいたので、余計に「そういう系」なんだろなと疑って食ってかかりました。
「そういう系」というのは、大衆向けしそうな、映像美+上手く練られたご都合主義カタルシスが出てくるような、作品というか。
控えめに言って期待していませんでした。
というのも金曜日ロードショーで「バケモノの子」を見たのですが、正直刺さるものが無かったからです。
孤独な幼少時代を経てバケモノに弟子入りする主人公は良いにしても、都合よく現れるヒロインとか、人間側に戻ってこいと暗に呼びかけているような話の構成。
記憶があまり残ってない……たぶんヒロインが気に入らなかったのだと思います。
サマーウォーズも、男女の絡みが正直とってつけたような部分があって、ご都合主義が多い人なんだろなと言う認識がありました。

物語としてある以上、ある程度のご都合主義は必要というか、設定上そういう展開ないし設定を用いなければならない場合があることは重々承知しています。
そういう意味では、そばかすの姫である主人公鈴の分身・Bellが道端(?)で歌を歌っただけで爆発的な人気を勝ち取ったのはご都合主義と言えるかもしれません。
でも、その展開を見る前に鈴が歌を好きになった背景、歌を歌えなくなった理由、人生をやり直せる「U」との出会いが描かれるのです。
歌、というか音楽ですかね。
音楽に興味を持ち始めて、母と父とそれを楽しんでいたところに訪れる突然の母との別れ。
正直、鈴の母が亡くなる要因となった出来事に関しては、実際こんなことする人いるか!?と映画を見終わってから思ってしまいます。
けれども鈴の母は鈴、この感想を書いている私とは違います。
だから鈴の母は死んでしまったのです。
だから鈴は悲しんだのです。
この場面はとても鈴の感情とリンクしてしまって、先の展開が分かっていながら思いとどまってくれないかと胸が締め付けられる思いでした。
母の別れを鈴とともに痛烈な感情を刻みつけられた視聴者は、歌えなくなった鈴を見てなんと思うでしょう。
そして歌えなくなった鈴が、仮想の世界でやり直して歌えるようになった姿を見て視聴者はなんと思うでしょう。
私はボロ泣きしました。
鈴が特別歌が上手かったのか、人を惹きつける見た目だったのか、「U」の人達が何を思ってBellの歌を良いと思ったかは分かりません。
でも私はBellの歌を聴いて、鈴が歌に乗せる思いを聞いて泣きました。
だからというわけではありませんが、Bellが爆発的な人気を得たとしても「うわっ、これご都合主義ィ」なんて思えなかったのです。
というか「ご都合主義」なんて言葉が頭に浮かんでしまう作品は、視聴者が作品に没頭出来ていないことの現れなのだと思います。
そういった意味では、そばかすの姫は冒頭から作品にグッと引き込まれて最後の最後まで話に没頭させてくれる作品でした。


ーーー


さて、鑑賞後の感想と言いながら冒頭の感想を綴ってしまいました。
計画性なんてあったもんじゃありませんね。
で、ここからはもっと踏み込んだことを書きます。
ネタバレとなることも書くと思いますので未視聴の方はブラウザバックをお願いします。
感想です!ただの!感想!


CMでも散々言われていた「竜の正体」が今作の大きな謎であり鍵でもあります。
いや当方の見たCMがそれをデカデカとのたまっていただけで他のCMはよく分からないです。
竜とは「U」の世界で他のAZをこてんぱん(マイルドな表現)にしてしまう荒くれ者。
超超超ビッグになってビッグな舞台にてライブを行っていたBellのもとに、自治集団(たぶん)ジャスティスに追われた竜が現れます。
ジャスティスのAZたちを文字通り凍結していく竜を見て、Bellは言います。
「あなたは誰?」
しょーーじき、なんでその言葉?と思いました。
というのも、この問いは身バレしろという暗喩に聞こえたからです。
どこの誰で、どうしてこんな事をするの?
誰かに恨みがあるの?なにかしたい事があるの?
初対面のBellの言葉はこういったニュアンスが感じられて、まあでも気になるっちゃなるよなあ……というとこで何故か竜の正体探しが始まりました。

竜が誰かなのは気にならんでもないので、まあみんなよく推測するわなあと色んな人の仮面を暴く有様を見ながら人間の醜さを思い知りました。
アーティストの面の皮厚すぎましたね。
野球選手はただのいい人だったけど、世の中あれだけ煽られて、素直に声明を出せる人は少ないだろうなあなんて思ってしまいます。
ネットの尽く的はずれな竜の正体探しを経て、Bellはついに竜の住む城を発見しました。
ここからBellと竜の1体1のやり取りが始まるのですが、Bellは相も変わらず「あなたは誰」と問いかけます。
ここに来て、なんだかその言葉の意味が違う気がして来ました。
たぶん、あなたの身元を知りたいという言葉ではなくて、あなたの人となりが知りたいという言葉だったのでしょう。
だから「あなたは誰?=どんな人?」という問いかけをBellはしていた。
……とはいえ現実の身元探しをしていたのは事実なんですけども。

結果として竜の正体は虐待を受けていた少年だったわけですが、AZというアバターは本人の眠っている能力を開花するといったもの。
故に、親の暴力から身を呈して弟を守る少年は、我慢強さが誰の言いなりにもなるまいという力を持つ竜に変わったのでしょう。
この竜のAZについては映画でも言及されていますが、竜の背中にはアザがあります。
アザがあるのはマントだったので、模様じゃないんだと思ったりしましたが、現実の身体変化によってAZに体の傷がリンクするといった設定から、おそらくは衣類も含めてAZなのだと思います。
徐々に増えるアザを見て、当初このキズはタバコの焼き跡かと思いましたが実際は心の傷でした。
いやどっちにしろ痛いんだけど……。


「U」は仮想の世界で、現実では出来なかったことがやり直せる。
だけど、「U」にいるAZの本体は現実にいる人間で、現実に生きる以上「U」の世界はせいぜい一時逃避にしかなり得ない。
少年の竜を見ながらそんなことを思いました。
さらに竜は他のAZをこてんぱん(マイルドな表現)にしたこともあって、それこそ現実世界の父親のような正義の押しつけがましい集団に襲われるのです。
皮肉だなあと思いました。
おそらく障害があると思われる弟に、ヒーローである姿を見せたかったであろう少年はやり直しが出来る世界であっても己は誤っていると糾弾されるのです。
たしかに竜は苛烈なプレイヤーでありました。
けれども運営は敢えて「U」にAZを取り締まる機関を設置しなかったのです。
公式に裁かれるのなら良い、という話ではありませんが、非公式の正義を自称する集団に囲まれるのは、昨今のネット警察を彷彿とさせました。

様々なSNSが発達し、特に日本人は己の姿形を現実とは異なるものとしてそれらで自己を表現しているように思います。
(外国人の事情を知らないとも言う)
VTuberなんて世界こそ己のチャンネルという小規模ですが、仮想の世界でやりたいことが出来てしまうんですよね。
この場合のやりたいことっていうのはあくまで人1人が何とかできるレベルなので大それたことではないのですが、例えば歌手になったり、男の人が女の人のように振舞ったり、講師になったり、その他エトセトラ。
だから自分が自分以外になれるってところを視聴者は割とすんなり理解出来たんだと思います。

でも自分以外になっても、現実の自分の生活が変わることはありません。
気持ちの上では多少前向きになれるかもしれませんが、およそ生活環境は気持ちの変化で変わるものではありませんし、ましてやシングルファーザーの少年の家庭は余裕なんてない。
だからこそ少年は仮想の世界でヒーローである自分を弟に見せて元気づけてやりたかったのでしょうが、竜のやったことはお世辞にもヒーローとは言い難いものでした。
けれども正体を知っているからか、弟は竜をヒーローと言いました。
それは竜ではなく、現実の兄自身がヒーローであるということに思えましたが、弟の中では竜も兄も同じなのかもしれません。

終着点としては、その竜の正体を突き止めてフェイスチャットするまでたどり着いた鈴がどのようにして少年を助けるかという話になります。
たぶん、竜とそばかすの姫の主軸が恋愛だとしたら「竜の正体分かってハッピー!後日2人でデート」という締めだったでしょう。
しかしこの話は「U」を通じて歌が歌えるようになった鈴と、ヒーローになった姿を弟に見せる少年の話です。
少年はおそらく父親に「U」のことを話していないと思われます。
であれば、いくら正体を暴いたところで「U」が介入しない(と思われる)少年の現実には何ら影響が起きないのです。
「U」は仮想の世界だから当たり前といえば当たり前なのですが、でもその仮想と現実の壁が心の壁のように感じてしまいました。
ここで鈴が何をしたかというと、根幹に関わる部分なので伏せますが、彼女の母と同じようなことをしたなあと思いました。

鈴はずっと「自分の子供>見ず知らずの子供」という選択をした母が理解出来なかったのだと思います。
まあ状況からしてただの見ず知らずの子供ではなかったわけですが、それでも生命の危険を冒してでも、鈴の母は他人の子を助けに行ったのです。
後に親戚と思われる人物たちのセリフが流れますが、どの人もその行為を好ましく思っていなかったようです。
たぶん鈴自身も好ましく思っていなかったですし、だからこそ母の気持ちを理解したいと思って諦めたのでしょう。
でも高校生になった鈴は、「U」で知り合った見ず知らずの子供を助けたいと願い、行動に移します。
どちらかというと陰キャで控えめな彼女が、現実世界では見ず知らずの彼らを助けたいと強く願ったのです。
きっと思うことこそ誰しもが出来ることですが、行動に移す人なんて何人いるか分からないくらいの感情。
衝動、という部分もあったかと思いますが、誰かを助けるために行動する姿はまさにあの母の子供だなあなんて自分の子供のように胸が熱くなりました。


ーーー


そんな鈴。
物語開始時こそヒロちゃんと名乗る毒舌な友人しかそばに居ませんでしたが、最終的に地域の合唱部や同級生のカヌー部吹奏楽部、それにイケメン幼なじみが彼女を心配して駆けつけてくれました。
鈴に気のあるような素振りを見せたイケメン幼なじみことしのぶくん。
彼は鈴に気があったわけではなく、鈴の母に変わって彼女を見守っていたことが判明します。
そして「U」に鈴を誘った張本人でもあるPC大魔神なヒロちゃん。
なかなかいい性格の友人ですが、終盤で鈴が重大な決断を求められた際に鈴のことを必死に庇います。
ここで、ヒロちゃんも鈴の母だったのかあと。
見守りに来てくれた合唱部の人たちも、写真を見れば鈴が小さな頃から面倒を見ていたようで、彼女たちも鈴の母でした。
改めて見ると、鈴は実の母を失ったけれど、沢山の母とも成りうる人達に大事にされながら育てられたんだなあと思います。
まあ、鈴自身しのぶくんに気があったようなので母目線を送られていたのは少々不本意だったかもしれませんが。

「U」の世界で鈴が有名になって、現実で鈴が正体を明かさなくとも正体に気づいていた母ず。
そんな彼ら彼女らの鈴を思う気持ちを見れば、「U」はただの仮想の世界ではないなあなんて思ってしまいました。
現実の自分あってこその仮想の世界の自分なので。
とはいえ、この話はかなり極端な例なので誰しもがそんな仮想の世界で何かが起こったから現実のありがたみを知る、なんてことにはなれないのですけども。
SNSに特化した今、自分が自分以外になれる今だからこそ刺さる作品だなあとひしひしと感じました。


ーーー


そのままめちゃくちゃに書き綴ったので公式の情報と矛盾してることがあるかもです。
サイレント修正しても許して欲しい。
つまるところ、個人的にはすごく良く感情を揺さぶられてたまらない作品のひとつとなりました。
パンフレットはあとでゆっくりみます。
というかもう、感情が色々なものを受け付けないので今夜は大人しくします。

おそるべし細田守……。
いやはや、なんてものを見せてくれたんだホント……。


【完】